「生命の木」バオバブ

「バオバブの木って大きな木だよね?」「名前は聞いた事ある」「何かの物語で聞いたような…」という方が多いのではないでしょうか。
サン=テグジュペリ作『星の王子さま』にも登場するバオバブの木。知っているようで知らないバオバブの魅力をご紹介します。

バオバブのある場所

バオバブは、アフリカのサバンナ地帯を中心に自生し、地球上で最も大きい木と呼ばれています。
一口にバオバブと言っても、実は色んな種類があります。アフリカの他、マダカスカルやオーストラリアにも自生しており、そびえ立つようなのっぽ型のバオバブ、寸胴で枝がモジャモジャのバオバブ、徳利のようなバオバブなど、見た目はどれも特徴的で個性豊かです。大きくて存在感があることだけは共通しています!

  

長寿の木

年輪がないので正確な樹齢を知ることは難しいのですが、1000年〜数千年と言われています。最も長寿のバオバブは推定樹齢6000年と言われています。なんと幹周囲47m、高さ22m。残念ながら現在は倒壊してしまいました。
古木・巨木には、その土地で大切にされ、固有の名前が付けられています。パンケ、チャップマンバオバブ、サンランドバオバブ──。まさに「神の木」です。

蓄える力

バオバブの幹はスポンジ状になっています。幹の中に蓄えた10tもの水分で、厳しい乾季を生き抜きます。ゾウが喉を潤しに幹をかじりにやってくるそうです。大きな木になると、中は空洞になることが多く、小動物が住みついたり、人々は穀物や水の貯蔵庫として活用ししています。

小さな薬局

現地の人々は、この木から多くの恩恵を受け様々な形で活用してきました。「小さな薬局」「薬の木」とも呼ばれるほど、葉・実・種・皮・根・幹、この木の全てを様々な形で生活に活用し、とても親しまれています。

「 種 」
固い種は、ローストしてスナックやスープに、細かくしてコーヒーに混ぜて飲料や食用に。
種から抽出されるオイルは、ソースやペーストにして、食料、化粧品、医薬品として活用されます。乳液、石鹸、歯磨き粉、筋肉の硬直、静脈瘤、傷のトリートメント、保湿剤として髪や爪、頭のふけ、皮膚疾患などにも利用されます。

「 葉・新芽 」
葉は、ビタミンC、糖分、ポタシウム、カルシウム、鉄分、プロテイン、脂質、ビタミンAが豊富。食用やお茶、粉末に。頻尿や下痢止め喘息対策としても活用されます。

「 実 」
バオバブの実は一般的なフルーツのようにフレッシュな状態ではなく、乾燥して白い粉状になっています。ヨーグルトやジャム、ジュースやスープなどに混ぜて食べたり、シャンプーや石鹸、スキンケアにも活用されています。

「 殻 」
殻はとても硬く、外皮はビロードのような肌触りです。きれいに果肉や種を取り除いたものを、食器やカップ、ハンディクラフト、水差しとして利用しています。

「 幹 」
巨木になった木は中が空洞になる事が多いです。人々は、穀物や水の貯蔵庫、儀式や祈りの場、刑務所やバス停やバー等にも利用しています。小動物の住処にも。

「 樹皮 」
屋根材、ロープ、かご、帽子、洋服、ネット、紙、釣糸などに利用されます。薬としても有用で、煎じ薬は頻尿やぜんそく対策、伝統的に高熱対策としても活用されます。
 

「 根 」
染料に使われたり、入浴時に使われたりしています。

スーパーフード・バオバブ

バオバブの実は、木にぶら下がったまま自ら乾燥していく、とても珍しいフルーツです。その過程で実のエキスが自然と凝縮されていきます。大人の木になるまでに約20年ほど。実を付けられるようになると、1本に約100〜200個の実がなり、カラカラに乾燥すると高い枝の上から地上に落ちて来ます。

この実はビタミンC、カルシウム、ポリフェノール、食物繊維など、多くの栄養素が含まれており、アフリカのスーパーフードとしても認定されています。

硬い殻を割ると、種の周りにを白い粉の部分(乾燥した果肉)があります。バオバブの果実には、非常に高い抗酸化作用があり、老化や病気の予防に役立つとされています。また、食物繊維も多く含まれているため、腸内環境の改善にも効果があります。

栄養価比較
ビタミンC:レモンと同程度 
カルシウム:牛乳の3倍 
食物繊維:ごぼうの8.7倍 
鉄分:ほうれん草の3倍 
ポリフェノール:赤ワインの12倍

バオバブの果実は、酸味があり爽やかな味わいです。風味や栄養価を高めることができます。スムージーやジュース、ヨーグルト、シリアル、グラノーラなどに加えて食べられています。

バオバブを守り、共存する。

アフリカ文化の中で、古くから多くの伝承や神話に登場するバオバブ。人々はバオバブの木を利用しながらも神聖な存在として守り続けてきました。

近年、その栄養価や豊富な美容成分が注目され、ヨーロッパなどでは多機能オイルとしてマッサージオイルやケアオイルとして重宝されています。私たちがこの木から恵みを受け続けるためには、バオバブの木の適切な管理や保護策を行い、持続可能な収穫方法を取り入れることが必要です。バオバブの木を守り保存することで、素晴らしい大地の恵みを次の世代につなげて行く事ができるのです。